MARTE Interview Vol.6
2024年4月30日、MARTEがお店をオープンして8周年を迎えます。デザイナー野村仁美とマネージャー三好香織に”MARTE”の起源やオリジナルブランドの誕生秘話、洋服やお店に対する想いについて、じっくりとお話を伺いました。
Interviewer(以下略):改めましてMARTE8周年、おめでとうございます!お二人の出会いから教えてください。
野村仁美さん(以下敬称略):ありがとうございます。早いですね、あっという間です。三好は前の職場からずっと一緒。私が22歳の頃始めた古着屋さんに、スタッフとして入ってきてくれたのが出会いです。
三好香織さん(以下敬称略):なかなか自分の好きな系統の古着を置いている古着屋は当時なかったけど、その古着屋は大好きで元々通っていました。2店舗目が出来るからと当時のスタッフさんに声をかけていただき、働き始めました。 28歳目前で新しいステップに進みたく仁美さんに相談したら、丁度仁美さん自身も新しい道に進みたいと考えていたみたいで。二人の気持ちが同じ方向を向いていたこともあり、一緒にお店をやろうとなった。古着屋で5年、MARTEで8年...もう13年も一緒に働いている!(笑)
I:10年以上の付き合い!それだけ長く一緒に仕事をしていて、意見や感覚が食い違うことやぶつかり合うことは無かったですか。
野村:どうだろう、あっても5分くらい?(笑)感覚が食い違うというよりデザインしたものや作ったものを、世に出すか出さないかで話し合ったり。
三好:私も仁美さんもこだわりが強いけど、ズレてはない。お互い違う部分はあるんだけど大きい円を描いた時に円が重なる部分は割と大きくて、円が重ならない部分で討論になる。けど、根本が似ているから話し合えば何でも解決します。
I:同じような感覚を持っていたからこそ、一緒にお店を始められたのですね。
写真:2017年MARTEオープン当初の様子
野村:お店を作りたいなとは思っていたけど、一人でやる自信はなかった。三好が付いてきてくれるってなったからMARTEを始める決心がつきました。三好がいるなら絶対大丈夫だ!って思ったな(笑)
I:絶大な信頼関係からMARTEは生まれたんですね。
野村:「私の意見が絶対だ!私に付いて来い!」みたいなのは苦手。それは三好も一緒だよね。スタッフのみんなにも意見を聞いて、販売する立場のスタッフの気持ちにもなって意見や他の感覚を取り入れながら動いています。
三好:こだわりはあるんだけど誰かに背中を押して欲しいタイプ。自分のこだわっている部分や意見を仁美さんに一度確認して、いいねって共感してもらえたら自信を持って世に出せるな。
野村:じっくりと話し合ってやってきた8年間です!
I:アクセサリーブランドSYKIAが誕生した時のことを教えてください。
三好:結婚式が控えていた時に、披露宴でつけるヘアアクセを探し回っていて。そんなときに可愛いかつ丁度良い価格帯のヘアアクセサリーブランドがあったら良いのになぁと考え始めて、当初はMARTEのオリジナルラインでアクセサリーをいくつか制作してました。
I:SYKIAを始める前から、MARTEオリジナルとしてアクセサリーを出していたんですね。
三好:MARTEのルックの撮影でレザーの紐を髪に巻き付けて編むようなスタイルをしたくてハンドメイドで作りました。お手製ヘアアクセサリーとしてSNSに載せたら「欲しい」って連絡を多くいただいたので、知り合いのレザー職人にレザーのヘアアクセサリーを作ってもらい販売したらお褒めの言葉を多くいただき。そのくらいの時期からこんなアクセサリーが欲しいなとデザインが頭の中にどんどん出てきました。 ヘアアクセサリーや、私達がほしいと思う様なアクセサリーをブランド化して作りたいなと思うようになってきて、2020年にSYKIAをスタートさせました。
写真:ルック撮影のために制作したお手製ヘアアクセサリー
I:初期のデザインのインスピレーション源は何だったのでしょう。
三好:日常をそっと彩るような独創的で私たちらしいアイテムを、仁美さんと話し合いながらデザインしていきました。
ヘアアクセサリーに関しては、仁美さんが作る服に対して、こういうヘアアクセサリーをつけたら可愛いなと考えたのが始まりです。この服にはこんなレザーのアクセサリーが似合うな、お客様方にも提案したいな、じゃあ作ってみよう!となってまず完成したのがLeather Hair Pierce。
I:ヘアゴムが見えないよう巻きつけるタイプのレザーヘアアクセサリーは、当時初めて見ました!
三好:私の中でへアクセサリーはコーディネートをトータルで見た時にとても大事なものだったから、お客様方に提案したかった。産休に入る前に必死になって完成させた思い出(笑)
写真:初期コレクションの一つである 2 Stone Mood Ring と Leather Hair Pierce
I:SYKIAスタート同時くらいに産休に入られていたんですね。
三好:産休に入る前に初期コレクションで20型くらい製作したかな。ヘアアクセサリーはもちろん2 Stone Mood Ringも初期コレクションでした。
野村:2 Stone Mood Ringは自然界で移り変わる空の色、植物の色、四季など、SYKIAのテーマでもある時の流れを感じさせるアクセサリーを作りたく、アクセサリーの業者さんに仕様の相談を何度もしてようやく完成しました。発売して4年近く経った今でも人気で嬉しいです。
I:SYKIAの名前の由来はなんでしょうか。
野村:SYKIAはギリシャ語でイチジクという意味。旧約聖書や神話に登場する、古代から親しまれてきた神秘的な果実の意味合いと、シキアという透き通った響きが美しくて気に入りました。幾つか候補を出しましたが、私も三好も気に入ったので、結構すんなり決まった記憶です。古代遺跡や神話などの過去から現代へと繋がっていく、時の流れをテーマ性として掲げています。初期は旧約聖書をモチーフとした展開から始まり、エジプトの神話や、ルネサンス絵画、はたまた宇宙の軌道からインスピレーションを得たシリーズを展開しています。今後も様々なものにフォーカスしたコレクションを発表予定です。
I:オリジナルブランドとして、もう一つ。sa ha raをスタートさせたきっかけを教えてください。
野村:コロナ禍で海外の古着の買い付けに行きづらくなってきた時に、自分やMARTEというお店を内観する機会がありました。自分たちのやるべき使命はなんなのかと考えた時に、買い付けや古着から得た経験を"古着ではない新しい形"で表現したいなと。自分たちでもビンテージピースに残るような服を作りたいと思い始めていました。
三好:今まで販売していた古着と差別化を計るためにsa ha raというブランドを作りました。
写真:sa ha ra初期コレクション / 初期は"on earth"と題し5種類のシアーカットソーを販売
I:ブランド名はSYKIAと同じく幾つか候補が出ていたのでしょうか。
野村:いや、sa ha raの時は候補をそんなに出さずに直ぐに決まりましたね。ちなみにMARTEの名前をつけるときもMARTEだ!って名前が降りてきた(笑)
I:降りてきた!(笑)自分がしっくりと来る名前を見つけた時の感動は大きいですよね。sa ha raの名前の由来を教えてください。
野村:MARTEはイタリア語、SYKIAはギリシャ語ということもあり、自然と日本語を感じさせてくれる名前に惹かれてました。そんな時にふと、"サハラ"と頭に浮かんで。サハラ=砂原 とも読める。それでいてサハラ砂漠を連想させる。かつて地球上に最初の文明が起こったとされる世界四大文明も、世界最大のサハラ砂漠も、遙か昔は緑が生い茂る豊かな土地だった様です。文明の始まりをイメージ出来る名前でとても気に入りました。製作していくお洋服も古今東西、現代にはない、異文化や異世界的要素を感じられるような想いを込めてsa ha raという名前になりました。
写真:sa ha ra 2024 SUMMER COLLECTION
I:sa ha raのお洋服を作る時に意識していることってありますか。
野村:元々古着屋の出身ってこともあるから、近代的な雰囲気もある中でちょっとクラシックな感じも出したい。ありふれている既製品とはどこか違う、個性がある洋服を作り続けたいと思っています。
I:sa ha raのお洋服は古着と相性の良いお洋服がたくさんありますもんね。
野村:ヴィンテージのピックをしている時、ここがこうならもっと良いのに!この色ならピックしたのに!などなど、20年以上洋服に対する願いが蓄積されていて(笑)。それをsa ha raというフィルターで表現しています。ラフ画の時点で「こんなヴィンテージがあったらすかさずピックするなあ」と思う。あとは、学生時代に服装史で習って憧れていたドレスのスリーブを見返して現代風に取り入れたり。どこか物語性と、古着の様なユニークなひねりのあるお洋服を作り続けたいですね。
I:sa ha raはシーズンごとにコレクションを発表しますが、コレクションテーマを決めないのはあえてですか。
野村:個人的にテーマを決めちゃうと、それに縛られて製作ができなくなってしまう。だから自分が今欲しいものとか、好きなシルエットとか、スタッフや三好が気になるものを聞いてそれをsa ha raというフィルターを通して製作しています。古着をピックしていた時の感覚と似ているかも。だからみんなの意見も凄く大事。
I:社内で出た案や意見を仁美さんなりに昇華してsa ha raとして世に出ているんですね。
野村:理屈で作るより感覚で作ったほうが良いものが出来ると思うから。私自身のこだわりも強いからデザイン画をみんなに見てもらってそこから得る新しい感覚も少しずつ取り入れながら日々製作しています。sa ha raの服は普通の既製品と違って3,4癖は入っているよね(笑)。
三好:自分たちからしたらそれが普通だから癖をわざわざ入れているつもりはないんですけどね。私たちのルーツでもある古着とリンクしているのかも。私sa ha raの服が古着の山に埋もれていたら絶対ピックしますもん(笑)。
野村:わかる!そういう服を今後も作り続けたい。
写真:sa ha ra 2024 SPRING COLLECTIONにて販売中の Metallic Tape Design Tee / 現在発売中のアイテム写真
I:洋服を製作するときに何を一番大事にしていますか。
野村:言葉で言うのは難しいけど心が感化されるかどうかを洋服を作る上で大事にしてます。私は古着屋さんの、色々な年代のものや面白い服があるからこそ生まれる現実とはちょっと違う空気感が好きなんだよね。昔から古着屋に行くことで想像力を掻き立てられて心が感化されていた。人によっては音楽、美術館、海外旅行に行ったときにそういう瞬間があると思う。私の理想は人間が感化される瞬間をsa ha raの洋服を通して生まれて欲しい。sa ha raの服に出会うことでビビッとくる、みたいな。こんな世界線があるということを知ってほしい。
三好:だからTシャツがずっと作れなかったよね。心を感化させるようなTシャツってどんなだ!?って(笑)2024ssで初めて納得のいくTシャツが作れたからよかったね。
I:今後MARTEをどういったお店にしていきたいですか。
野村:sa ha raのお洋服、SYKIAのアクセサリー、そしてMARTEというお店を通して想像力が掻き立てられるような企画を今後も提案していきたいです。ちょっとした非現実をプレゼント出来るようなお店が良いな。
三好:今後も視覚だけじゃなくて五感を通じてお客様の多幸感を増やせるようなお店にしたい。今香水を作っていますが、もっとライフスタイルや精神面に訴えかけられるような商品を展開できたら良いです。たくさんのお客様に愛していただけるよう、今後も成長し続けていきたいです。
8年間、ブランドの大黒柱であり続ける2人。こだわりを押し付け合いせずチームワークを大事に"心が感化されるお店"という目標を抱えながら日々精進しています。
MARTEを昔から知っていた方も、最近知り始めた方も、MARTEに触れることで心に非現実的な何かをプレゼント出来たら本望です。
MARTEでは8周年を記念してさまざまなイベントをご用意!
ノベルティフェア
税込25,300円以上お買い上げのお客様にMARTEオリジナルトートバッグをプレゼント。
詳しくは こちら
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当日SNSでご報告させていただきます。情報開示まで今しばらくお待ちくださいませ。
Gest:Nomura Hitomi / Miyoshi Kaori
Text:Furihata Yurika
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