MARTE Interview Vol.3
MARTE新宿店オープンから1周年を記念し、内装ディレクションを行っていただいた関直宏さんにお話を伺いました。
赤土色の非現実的な店内が魅力的なMARTE新宿店。
大都会の様々な情報が溢れる新宿において、訪れた方々の心をリセットし「新たなる発見、未知なる感覚」を体感していただけるようなお店を目指しています。
MARTE新宿店が1周年を迎えるにあたり、新宿店の内装の拘りや思い、また仕事をする上でのインスピレーション源などを話していただきました。
M:新宿店の内装が決まるまでにどれほど時間がかかったのでしょうか。
関さん(以下敬称略):大きなデザインイメージは現場を見に行ったその日に決まりました。新宿店の通路は人通りも多くてごちゃごちゃっとしていて、初めて現場を訪れた時にそれがとても印象に残ったんですよね。その人が行き交う中に、一色、色の塊を置くような内装にしたいと思いました。
MARTEといえば火星をコンセプトにずっとやってきたブランド。そのブランドイメージを店内に表しました。一応グレーやウッドなど他の色パターンも作りましたが、MARTEの方々も赤色の店内に賛成してくれて、決まりました。
M:赤にも色々な種類がありますが、あの店内の赤に辿り着くのも早かったのですか。
関:いや、あの赤に辿り着くのは結構時間かかりました。左官(むらを残すようなモルタル調な仕上げ)は床や天井に。壁も全てが左官だと全体的につるっとしてつまらないなと思い。普通は内装で使われることはないジョリパット(従来建物の外壁につかうような塗材)を使用しました。
壁や床、天井だけではなく試着室のカーテンやカーペット、レジ代など、それぞれ異なる素材が使われています。さまざまなテクスチャーを使いながらも赤一色。テクスチャー毎に色のサンプルを取り寄せて、合う合わないと擦り合わせる作業が一番時間がかかりました。
M:新宿店は赤色の店内に加え、弧を描くハンガーラック、くり抜かれたような棚など、面白いポイントがたくさんあるように感じます。
関:ハンガーラックも棚も全部1から作成しています。あのぐるりと回りながら下がっていくハンガーラックは三次元曲げと言われていて、美大時代の後輩に依頼して作成してもらいました。
黒い鉄の状態で、一度実際にお店に持ってきて、仮置きして、修正して。そこからまた持ち帰ってブロンズに塗って...。かなり大変な作業だったと思います。
M:あのくり抜かれた壁にも大変な作業が?
関:あの壁を作るにいたっては、商業施設側の意見も取り入れ、壁ではなく家具として製作しています。通路に置いている台も元は木なんですよ。その木を曲げて形を作り、上から左官して仕上げています。施工会社の木工所に頼んだのですが、実際僕も現場に出て改めて施工会社の人が体力的に一番大変だなと思いましたね。
M:このレイアウトができるまでどのくらい案を出されたんですか。
関さん:3、4パターンくらいだしてからMARTEの方々と話し合いを重ねて、設計・監修を行ってくれたFRYGALLERYの池田さんと相談しながらやっていました。大まかなイメージが決まってからの細かい修正が多かった印象です。
写真:SERA HELSINKI 展
出典:stoop公式サイト
M:グラフィックデザイナーに加え内装デザインの仕事をするようになったきっかけってなんですか。
関:元々広告会社でいわゆるマス広告を作っていて、そのあと家具屋に勤めました。販売だけではなく簡単な家具の図面を引かせてもらったり。独学で内装について勉強をして、イギリスにも一時期住んでいました。そこでの経験が仕事に反映していると思います。インテリアはもともと好きだったのでそれが今仕事の一つとして取り組めているのはすごく嬉しいことですね。
それに加えてヴィンテージ家具のギャラリーもオープンさせてインテリアにさく時間も増えてきました。
M:清澄白河のstoop(ストゥープ)ですね。
関さん:stoopではヴィンテージの家具の販売はもちろん、ギャラリースペースとして展示会なども行っています。先日はエチオピアで制作しているフィンランドのラグブランド、SERA HELSINKI(セラ・ヘルシンキ)の日本初となる展示を行いました。たくさんの方に来ていただけて感謝しています。
写真:ヨーロッパ買い付けの様子
M:ギャラリーの運営を行うにあたって意識している点や今気になっているものはありますか。
関さん:海外に買い付けでよく行くのでそこで得る感覚は大きいです。住んでいたからこそヨーロッパの風景から感じ取れるというか。海外には、ヴィンテージ家具や現代アートをミックスしてみせるような、本当にセンスの良いギャラリーもたくさんあって。インテリアに関しては日本と違って型にはまっていない自由な感じ。一歩間違えたらダサいに変換されるような。それとこれを合わせちゃうの!?でも全体的にみると成立しているねっていう攻めたギャラリーをみるのは、日本人にはない感覚が多くとても勉強になります。内装デザインに限らずさまざまな分野において参考になることばかりです。
M:結構な頻度でチェックはしているんですか。
買い付けで海外に行くときは、その土地にある見てみたかったギャラリーや、好きな建築家の建築物には必ず行くようにしていて、行けない時もリサーチは常にしていますね。
洋服って全身のコーディネートで終わりますが、内装デザインは床、天井、家具、空間全てをデザインする。素材も布もあれば石もガラスもあるという無限にある組み合わせの中でばちっとはまるものを選ぶ。日本人にはない感覚が海外の人には備わっているなと、実際現地に赴くとわかります。
写真:NILUFAR GALLERY
M:日本と海外でそこまでテンションが変わってくるんですね。関さんおすすめのギャラリーやアーティストはいますか。
関さん:海外に普段行けなくても海外のデザインチームが手がけたホテルもたくさんあるので泊まってみたら面白いかもですね。LAのコミューンデザインが手がけた「エースホテル」は見るだけで価値のあるホテルだなと思います。
ギャラリーは自分の足で自分の好きな雰囲気の場所を見つけるのが一番。この前ミラノにいったとき「NILUFAR GALLERY(ニルファーギャラリー)」に行きましたが格好よかったですね。
M:最後に、いつもバッグに入れているものを教えてください。
関:パソコンですかね。あと携帯と財布。荷物は極力少なくしたいので無駄なものは持ち歩かないようにしています。
グラフィックデザイナーから内装デザイン、そしてインテリアショップまで幅広くこなす関直宏さん。
そんな関さんが内装ディレクションを務めたMARTE新宿店が、1周年を迎えます。これもひとえに皆様のご贔屓ご支援の賜物でございます。今後もお客様に多くの幸せを感じて頂けるように精進して参りますので、引き続きご愛顧のほど何卒よろしくお願いいたします。
MARTE新宿店ではもちろん、MARTE全店で秋冬の新作が入荷しています。是非お立ち寄りくださいね。
MARTE LUMINE EST SHINJUKU
Interior Direction : Naohiro Seki (gallery stoop)
Design & Layout : Hikari Ikeda (FRYGALLERY)
Iron Work : Tsukuru Yoshimura
Construction : Eidaisougoukenchiku co. ltd.
Photos : Munetaka Onodera
Address : 東京都新宿区新宿3-38-1 ルミネエスト新宿 1F
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