2016年よりスタートしたMARTEは、2026年5月にMARTE10周年を迎えるタイミングで代官山に路面店をオープン。MARTE DAIKANYAMAが立ち上がるきっかけから、ディレクター三好と野村、二人三脚で歩んできた2人にさまざまな質問をぶつけます。
MARTE DAIKANYAMA
Instagram:@marte_daikanyama
三好香織 (Miyoshi Kaori)
ヴィンテージショップにて経験を積んだのち、2016年にMARTEをオープン。MARTEの全体ディレクションを手がけるほか、アクセサリーブランド「SYKIA」のデザイン、2026年に誕生した「ILANIS」のディレクションを務める。子育てをきっかけに衣食住への関心を深め、アーユルヴェーダの思想やスパイスチャイを用いたコラボレーションなど、五感に働きかける表現活動も行っている。
野村仁美 (Nomura Hitomi)
2008年よりヴィンテージバイヤーとしてのキャリアをスタートし、2016年にMARTEをオープン。海外でのバイイング経験や、多様な文化・時代から受けたインスピレーションを背景に、オリジナルブランド「sahara」や新ブランド「Ruh Dhan」のデザイナーを務める。フォトグラファーとしての一面も持ち、LOOK撮影などのビジュアルディレクションも自身で手がける。現在は、アロマや占星術、古代から受け継がれる叡智への学びを深めながら、五感と精神性にも寄り添うクリエーションを探求している。
MARTE Interviewer(以下略):MARTEを立ち上げた当初、どんなブランドにしたいというビジョンがありましたか?
野村仁美さん(以下敬称略):始めた当初はとにかく、三好と自分達が海外から自由に集めたヴィンテージを並べる小さなお店が欲しくて。三好と意気投合してヨーロッパのアパルトマンの一室にある小さなアトリエのような、隠れ家的な古着屋を始めたい、というのが最初の原点です。直感と好奇心で今の代表にお願いしてお店を作らせてもらいました(笑)。
M:どうして隠れ家的なお店をやろうと思ったのですか?
野村:たくさんの物件を見る中で、原宿という賑わう観光地の中で、古びたマンションの一室にある小さな異世界、みたいな…そんな物件がとにかく気に入ってしまい。
三好香織さん(以下略):
狭い空間に服や雑貨がぎゅうぎゅうに詰まっている宝探しのようなワクワク感をお客様に届けたかった。自分たちの心から好きなものを置いて、それを好きだと共感してくれるお客様が遊びに来てくれたら嬉しい、そんな一心でスタートしました。
野村:今もその本質は変わっていません。自分たちの好奇心やこだわり、心が躍る感覚の中にこそ、お客様への感動が宿るのだと改めて実感しています。その思いが、今回のリニューアルにつながっています。
M:この10年で、ブランドとして最も大きな転換点はどこでしたか?
三好:2020年にアクセサリーブランド「SYKIA」、2021年にオリジナルブランド「sahara」を誕生させたタイミングが、この10年を振り返る中でも大きく舵が切り替わったきっかけだったと思います。ある日電車で、アクセサリーのブランドを立ち上げたい!と思い立ち、すぐに仁美さんにLINEしたのを覚えています。たまたまですがローンチのタイミングとコロナ禍が重なり。外出も自由にできないような状況が訪れましたが、オンラインストアを通してたくさんのお客様に届けることができたことを、今でも嬉しく覚えています。そして今思えば同時期に二人の出産が重なったことも大きな転換点だったかもしれません。
野村:たまたま同時期に私と三好が出産をして、海外での古着のバイイングも難しくなり、出産とともに自分のライフステージが大きく変わったのが2020年頃です。その翌年にオリジナルブランドの「sahara」が誕生しました。ヴィンテージのバイヤーとして22歳から13年ほど過ごしてきたので、デザイナーとしての仕事がメインになっていったことが、個人的には大きな転機でした。
三好:「sahara」を始めた2021年は、古着屋としてのMARTEと、オリジナルアイテムを作ってきたMARTEが別々の道を歩み始めた年でした。MARTEをセレクトショップのように変化させていこうと考え始めたのもちょうどこの頃です。古着の割合を減らし、「sahara」をシーズンごとにコレクションとして展開していくようになったことで古着屋とは一味違う、アパレル会社としての経営を模索するようになり私自身の働き方もそこからガラッと変わった気がします。「sahara」が誕生したことで2022年には新宿ルミネエストに出店することにも繋がり、スタッフも増え、良い意味で会社っぽくなってきたのがこの時期です。
野村:コロナや出産を経て、自分たちの働き方も変わっていきましたね。「sahara」がブランドとして確立して、古着屋から始まった小さなお店が少しずつアップデートしていくような感覚もありました。
M:10年間走り続けられた原動力はなんですか?
野村:好奇心の赴くまま働いていたら、気づいたら10年経っていました(笑)。昔から仕事が好きで、デザインや写真など表現させていただける環境に10年もいられて幸せです。もし1人で古着屋をやっていたら、「sahara」はもちろん、10年間も続けられなかったと思います。皆さんに支えられてここまで走ってこれました。三好と2人でやってきた頃も今と変わらず仕事への熱意や楽しさが原動力でしたが、チームがどんどん大きくなる中で、さまざまなことに挑戦できる機会や仕事の幅も広がりました。
私が作った服をお客様に見ていただける場が増え、私のことを知らなくても服を見てくれる人が少しずつ増えてきて、10年前とはまた違ったやりがいも原動力になっています。
三好:私はお客様から、こんなの欲しかったんです、とか、思い切ってMARTEの服に挑戦したらいつもと違う自分に出会えました!とか、共感や喜びの声をいただけることがとにかく嬉しくて、原動力になっています。自分の好きなことの延長線上で誰かに喜んでいただけるって奇跡みたいなことだと思うんですよね。
私は学生時代、何を仕事にするべきなのか考えすぎて自分を見失っていた時期があって(笑)。続々と内定をもらう友人を横目に自分はダメだと落ち込んだ経験をしています。そんな私だからこそよりこのお仕事をさせていただけるありがたみを実感しています。
M:お互いに、相手の「ここが10年で変わったな」と思う部分はありますか?
野村:10年前は、カナダやイギリス、アメリカなど海外買い付けにふらっと行ったり、自由な時間も多いから仕事にも好きなだけ向き合えていたけど、お互い出産の経験をして、仕事と子育ての両立をしていく中で、どちらも大切な存在であり、その葛藤の中で必死に過ごしていたら今度は自分を置き去りにしていることに気づき始め…。自分自身の内側、人生そのものを考えるきっかけとなり、そのタイミングがお互いに同じだったのは大きかったよね。
三好:本当にそう思う。子供の存在があって、働き方だけではなく思想も変わってくる。限られた時間の中で何を大切に生きていくのか、生活の軸を考え直したり、衣食住を大切にする思想だったり。今後のMARTEの方針を決めるときも、お互いが気持ちを理解し合って共鳴し合えるのはとても大きいことだと思います。
野村:たとえばどちらかが出産していなかったら、価値観も全く違っていただろうし、分かり合えなくなっていたかもしれないね。
三好:子育てが生活に加わったことで、時間の使い方にメリハリが出ましたね。仕事の時はお迎えに向かう最後の一分まで仕事に全集中(笑)。たまに訪れる隙間時間は全力で楽しむようになった気がします。
M:今までは当たり前にあった"時間"がなくなることで、どんな変化が訪れましたか?
三好:以前は意識が外側に向いていることが多くて、家にいることはほとんどなく常に外の世界に刺激を求めていたように思います。子どもが生まれて自由な時間が限られるようになったことで、自然と家で過ごす時間を楽しむようになりました。
子育てを通して、毎日の食事や体質管理にも関心を持つようになりましたし、その延長で、自分自身の心の内側にも意識が向くようになりました。
セルフコンパッションを学んで、自分の思考の癖や心のパターンを一人で研究してみたり(笑)。気づけば、これまでの自分とはまったく違う分野に、どんどん興味が広がっていったように思います。
野村:早起きした朝や電車の中、お風呂の中、そんな隙間時間に瞑想したり自分の内側と向き合うようになり、人生やこの世界の本質的な部分に関心を持ち始めました。頭ではなく心を基準に生きるようになったというか…色々と調べるうちに世界が広がっていく感覚がありました。私だけこんなことを考えているのかなと思っていたら、まさか三好も似たようなことを考えていて(笑)。
私は古代からの叡智であるマヤ暦や占星術を学び始めたり、自然の恵みに興味を持って自宅で野菜を育てたりアロマを学んだり。三好はアーユルヴェーダや算命学を学んでいたりして。
三好:お互い興味のあることや好きなことが似ているので、気になったニュースや動画を見つけたら、休みの日でも早朝でも、勝手に送り合っています(笑)。その辺は今も10年前も変わりませんね。
写真:MARTE代官山店の様子。宮城県丸森町・大蔵山でのみ産出される両輝石安山岩を用いたオリジナルのテーブル、世界各国の希少なヴィンテージ家具も扱う。
M:MARTE DAIKANYAMAの主軸である"感性と五感をひらく創造の空間”が誕生するまでの過程を教えてください。
三好:子育てを経て自分の内側へ意識を向けるようになったからこそ、ファッションだけではなく自分の内側に寄り添ってくれるようなアイテムや、体験を取り扱いたいなと考えていました。 私も仁美さんも、自分が興味のあることを仕事にしたい、という想いが根本にあります。仕事と自分の心を切り離して考えられないんですよね。「店は自分の心の反映でもある」と言いますが、MARTEは本当にその通りだと思います。
野村:2021年の原宿店のリニューアルの際から、"五感を通じて心の安らぎを感じられる"お店をやりたいという思いが沸々と湧いていました。ただやりたいことがなかなか現実的に実行できない環境が5年ほど続いていました。
三好:この5年でお互いが内側への意識をより大切にするようになって、さまざまな勉強もして。以前はやれたら良いなという思いだったけど、時が経つごとに絶対にオープンさせたい!という気持ちが強まって。ようやく実現することができました。
写真:MARTE代官山店の様子。オリジナルインセンスをはじめとする香りものも充実。世界各地からセレクトした自然由来の調味料やハーブティーなど、味覚に寄り添うラインナップも展開。
野村: 五感をテーマとした理由としては、現代人は日々、頭で考えすぎてしまいがちです。考えることはもちろん大切だけれど、思考が巡り続けると、心が本来求めていることや純粋な好奇心、直感的なときめきよりも、「考えること」そのものが主軸になってしまう。未来への不安や、足りないものに目がいってしまう。そんなとき、たとえば美味しいオーガニックランチを食べたり、心地よい香りや音楽に触れたり、温泉やサウナで深く緩んだ瞬間、頭ではなく"感覚"を通して、今この瞬間に自分自身が満たされていくことに気づく。五感とは、自分の本当の心地よさへ、心の奥へ還るための入口なのだと思います。
MARTE DAIKANYAMAでは、ファッションだけでなく、香り、食、空間、音、感触など、五感を通して心の安らぎや感性の豊かさを感じられる場所を目指しています。私たちが本当に良いと思うものを探したり作ったりしながら、今この瞬間を楽しめるプロダクトを提案していきます。
M:10年後や15年後、MARTEとして目指すところはどこですか?
野村:昔からあまり先のことは考えてこなかったですね。やりたいことはたくさんある。いくつもの分岐があるからこそ、その時々で自分が良いと思う方向に舵を切って進んでいきたいです。
三好:今までもその時々の直感で服やアクセサリーを作り、意図せずMARTEという形が少しずつ変化してきた。これからも目の前のご縁をひとつひとつ大切にしていくことで私たちらしい選択につながっていくと信じています。関わるすべての人ーお客様も、スタッフも問わずみんなのマインドが豊かになるような存在でいたいな。
野村:5年後も10年後も、実際のところは分からない。レールを引きすぎずその時々の好奇心に従いながら、楽しみながら進んでいきたい。そうして自然と、私たちと共鳴できる方が集まってくるようなお店になっていけたら嬉しいです。
M:10年という節目に、MARTEを支えてくれた人へメッセージをお願いします。
野村:自分のワクワクする気持ちをお店を通じてお届けし、「好き」と言ってくださる方々がいることに心から感謝しています。気軽な気持ちで始めたMARTEも10年という歳月を経てさまざまなブランドが誕生し、長く応援してくださるお客様との出会いに恵まれました。
「sahara」に関しては、自分たちがやりたかった"アートを身につける"ことや、”歴史を現代に昇華する"アイテムの製作などを通じて、私たちの提案に共感してくださる方がたくさんいらっしゃって。MARTEを支えてくれているお客様方に、より新しい発見をお届けできるよう、私自身も変わり続けていきたいと思います。新しい発見ができるセレクトショップとして、ぜひ楽しみにお待ちいただけたら嬉しいです。
三好:10年間、MARTEを支えてくださったすべての方に感謝の気持ちでいっぱいです。10年お店を続けていれば、私たちもやりたいことや興味のあることがライフステージを重ねるにつれ変化していきますが、それはきっとお客様も同じだと思います。
MARTEのコンセプト「新境地、新たな自分自身の発見」を軸に、みなさまの心を少しでも穏やかに満たせるよう、私たちらしい提案をしていけたらいいなと思っています。
これからも自分の心にアンテナを張って、MARTEならではのワクワクを届けていけるよう尽力いたします。今後ともよろしくお願いいたします!
10年分の好奇心と、二人が内側で育ててきた思いが、代官山という新たな場所で形になりました。古着屋として始まったMARTEが、時代とライフステージを重ねながら少しずつ変化し、今この瞬間もその進化は続いています。
ファッションを超えて、五感を通じて心の内側を満たすものを届けたいという二人の想いが詰まったMARTE DAIKANYAMA。
MARTE DAIKANYAMA <マルテ代官山>
2026.5.23 sat. GRAND OPEN
住 所:東京都渋谷区恵比寿西1-34-23代官山トキビル1F/2F
GoogleMap
アクセス:東急東横線「代官山駅」東口 徒歩2分
東急東横線・日比谷線「中目黒駅」中央口 徒歩10分
JR線・日比谷線「恵比寿駅」4番出口 徒歩8分
営業時間:11:00-20:00
代官山に佇む、感性と五感をひらく創造の空間。
日常からそっと離れ、五感で体験する新たな場所へ。
皆様のご来店を心よりお待ちしております。
Guest:Nomura Hitomi / Miyoshi Kaorii
Text:Furihata Yurika
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