sahara シアートップスシリーズより、待望の新作が発売決定。今回はスウェーデン・ストックホルム近郊に生まれた女性画家・ヒルマ・アフ・クリントにフォーカス。
王立美術アカデミーで学ぶ一方、彼女が本当に向き合っていたのは"目に見えない世界。
同世代の女性たちと重ねた交霊会での"啓示"をもとに、1906年から9年をかけて193点の連作「Paintings for the Temple(神殿のための絵画)」を描き上げます。円や螺旋が織りなすその図像は、カンディンスキーやモンドリアンより数年早く生まれた、世界初の抽象絵画でした。
しかしヒルマは生前この仕事をほとんど公にせず、「この時代はまだ作品を理解する準備ができていない」——そう考えた彼女は、死後20年間、作品を公開しないようにという遺言を残します。
没後70年以上を経た2018年、ニューヨーク・グッゲンハイム美術館での回顧展をきっかけにヒルマの存在が広く知られるようになったのです。
見えない世界の構造を描き続けたヒルマの図像は、透けるという特性を持つシアー素材と重なる部分があります。光の当たり方によって柄の濃淡が変化し、肌や重ねたインナーが透け感の奥にうっすらと浮かび上がる——その曖昧な見え方は、ヒルマが描いた円や螺旋がふとした瞬間に姿を現すような感覚に近いかもしれません。
今回、saharaがシアートップスに選んだ5柄は、「Paintings for the Temple(神殿のための絵画)」の連作、あるいはそこから派生したシリーズに属する作品です。
柄ごとに、その物語を辿ります。
《Group Ⅸ, SUW, The Swan, No.1》(1915)
「白鳥」というモチーフは、ヒルマが傾倒した神智学において精神の高潔さを象徴する存在であり、錬金術の文脈では相反するふたつの要素が統合されていく過程を表すとされてきました。
01 Swan に描かれているは黒い雄の白鳥と、白い雌の白鳥。
光と闇、男性性(Asket)と女性性(Vestal)という2つの原理が対極に位置しながら、やがてひとつに統合されていく過程の出発点を表しています。
《The Ten Largest, Group Ⅳ, No.1, Childhood》(1907)
「The Ten Largest(10の最大物)」は、人間の一生を幼年期・青年期・成年期・老年期の4段階に分けて描いた連作です。02 Flower はその最初の一枚であるNo.1=幼年期。深い青の地に白い百合と桃色の薔薇が浮かぶ構成。
ヒルマは百合を女性性(Vestal)、薔薇を男性性(Asket)の象徴として位置づけており、この一枚にはすでに、彼女が生涯を通じて描き続けた「ふたつの原理の共存」というテーマの萌芽が表れています。
《Group Ⅸ, SUW No.12, The Swan No.12》(1915)
01 Swanと同じ「白鳥」シリーズにあたる03 Union。胸元を中心に、赤・青・黄・白の三角形が凧形に組み合わさり、対立するふたつの白鳥が統合されていく原画の構図となっています。01 Swanで提示された黒と白、男性性と女性性という対立の構図は、この一枚では幾何学的な円や帯状の色面の中に溶け込み、静かな均衡状態として描かれます。
円環と直線が織りなす構成は、対立が終着点ではなく、統合へ向かう過程そのものであることを示すヒルマらしい表現です。
《The W Series, Tree of Knowledge, No.5》(1913-1915)
「Paintings for the Temple(神殿のための絵画)」を完成させた後、ヒルマが手がけた全8点の水彩連作「The W Series(知恵の樹)」。すべての作品に共通するのは、ハート形の樹冠を持つ一本の樹という主題です。04 Tree of Knowledgeでは、この樹形が金と銀の装飾を纏いながら描かれ、精神的な成長の過程を象徴的に表現しています。
製作から一世紀近く経った2021年、この連作のうち一組がニューヨークで初めて公開され、知られざる傑作として大きな注目を集めました。
《The Ten Largest, Group Ⅳ, No.9, Old Age》(1907)
連作「The Ten Largest(10の最大物)」の最終段階を描いた一枚。
05 Old Ageは初期の作品群に見られた色彩や図形の賑やかな重なりは、この段階に至って淡いピンクの地へと静まり、螺旋と円が対称的に配置された、簡潔で穏やかな構成に変わります。
老いを衰えとしてではなく、これまでの過程が調和へと収束していく段階として描いた点に、ヒルマの人生観がよく表れています。連作の始まりである「Childhood」=02 Flowerと対をなす一枚として、円環が閉じる瞬間を象徴しています。
生涯、その眼差しを目に見えない世界へと向け続けたヒルマ・アフ・クリント。円が重なり、対立が溶け合い、また静けさへと還っていく——彼女が描き続けたのは、世界の裏側にある構造そのものでした。
sahara Sheer Topは、そんな図像をシアー素材という透ける生地に転写することで、纏うたびにその物語がふと立ち上がるような一枚を目指しています。
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